同志社大学社会福祉教育・研究支援センター Doshisha Education Research Center of Social Welfare同志社大学社会福祉教育・研究支援センター Doshisha Education Research Center of Social Welfare

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カテゴリー 【私と仕事】

私と仕事(母子生活支援施設で働く社会福祉士)

 2012年9月大阪出張カンファレンスで報告を担当した千品さんが、事後に書いてくださった文章です。

                               千品友理さん(2005年卒)
 

自分の実践家としての歩みを披露する戸惑い
 カンファレンスでの発表をするにあたって、正直戸惑いを隠せませんでした。それは、「社会福祉を勉強しようと志し始めた頃から今に至るまでを振り返る」ことを、無意識の内に自分が避けてきたからかもしれません。今に至るまでに楽しい思いだけでなくしんどい思いも沢山あり、それに向き合うのが辛かったのだと思います。また、私が感じてきたしんどい思いを、これから頑張っていこうとしている後輩達の前でさらけ出すことが果たして良いことなのか、それは自分の価値をも下げてしまうのではないか、という不安もどこかにあったのだと思います。しかし、今回素直に自分の思いを皆の前で語ることで、今までの不安は払拭され、自身の気持ちを整理する良い機会となりました。そして何より、今に至るまでにしんどくて苦しいことが沢山あったけれど、そこで立ち止まるのではなく、自分が少しずつ前に進んできたことに対し、“本当に今まで仕事を辞めず続けてきて良かった”と改めて感じることが出来ました。また、自分の思いに共感してくれる仲間、自分の悩みを一緒に抱えて考えようとしてくれる仲間がいることの偉大さに気付かされました。そう感じさせてくださった皆様に感謝いたします。

母と子の生活を支援するということ
  私の仕事は、DVや離婚問題、借金問題に生活困窮、虐待や障害…様々な問題が原因で入所されてきた母子家庭の母親達を対象に、利用者さんが自立に向かい一歩ずつ前に進めるよう支えていくことです。利用者の皆さんが施設を退所し、地域で自立した生活が送れるようになるまでには様々な課題があります。その課題を利用者さんと話し合いながら1つずつ解決していくのですが、中には精神的不安定からもう死んでしまいたいと訴えかけてこられる人や、自分に歯止めがきかずに子どもに手をあげてしまう人、何もやる気になれずに家事・育児も疎かになられる人もおられます。どれ1つとして同じケースはないですし、私は今までにここでは紹介しきれない程の様々な母親像を見てきました。

たとえどんな状況でも、変化が見られる
 たとえどんな状況に置かれていても、利用者さんは職員と一緒に過ごし話をする内に、自分が生きている意味を見出されたり、子どもに手をあげる回数が減ってきたり、職員と一緒であれば家事に取り組むことが出来たり・・・利用者さんそれぞれのペースではありますが、徐々に変化が見られるようになってきます。勿論、自立出来るまでの道のりは長いもので、すぐに結果が見られるものではありません。ですが、この少しずつの変化が見られる喜びは、私にとって大きな力となっています。その変化の積み重ねが利用者さんの自立へと繋がるのですが、時には日々の支援に行き詰まりを感じるケースや、退所が決まってもまだ不安が残るケース、母子分離せざるを得ないケースなどがあり、私達支援者がしていることの意味が見出させず、本当にこれで良かったのかと不安になることがあります。完璧や正解がないこの仕事だからこそ不安があって当然だとは分かっていながらも、頭を悩ませ苦しむこともあります。それでも私がこの仕事を続けることが出来ているのは、利用者さんから学ばせていただけることが沢山この場所にあるからです。

退所後のつながり
 退所された方々からお手紙やお電話を頂くこともありますが、退所者さんの元気な姿が見られ、元気なお声を聞けただけで今まで支援をしていて良かったと感じることが出来ます。これからも仕事をしていて悩むことは沢山あると思いますが、利用者さんの力を借りながら、「私がここで働く意味・ここで私に何が出来るのか」を考え続けながら日々支援に励んでいきたいと思います。

2012年10月30日 更新 カテゴリー:私と仕事

私と仕事(小規模特別養護老人ホームで働く社会福祉士)

                          竹安彩さん(2006年卒)
 

 2012年7月定例会で報告を担当した竹安さんが、事後に書いてくださった文章です。

 

 目指したいものが変化していることに気づいた
 大学の定例カンファレンスが始まった年に、一度発表させて頂き、自身を振り返る機会をもつことが出来ました。今回、ソーシャルワーカー7年目として、改めて発表させて頂きました。以前の自分と大きくは変わっていないと思っていましたが、参加者の方より、「進化しているね」と声をかけられ、現在の課題や目標、めざしたいものが変化している事に気付かされました。自分の現状や課題、目標を改めて、言語化・文章化するという機会は普段あまりない為、こういった機会のおかげで、整理が出来、見えてくるものが多くありました。

 職場の新人教育で悩む私が新人卒業生から教えてもらった
 当日は新卒から中堅、10年以上の経験者、そして講師の方がおられ、様々な施設、病院、役所等、経験も立場も違う為、充実した意見交換会となりました。 私自身、新人指導や職員のモチベーション向上について悩んでいたのですが、新卒の方から、先輩の指導環境や方法、上司に言われて嬉しかった言葉、指導を受ける側の思い等の話を聴くことが出来、多くの大切な事に気付かされました。

 参加者の質問や意見の中で、新人ソーシャルワーカーとしての悩みは、自身の存在意義や、医療面での知識不足があり現場で戸惑う、できれば学生時代に医療的な知識を身につけられる機会があれば良かった。他、ソーシャルアクションの大切さを感じ、将来的な目標としてやっていきたいが、今は目の前の事で精一杯である。困難ケースでの職員との関わりに悩んでいるといった意見がありました。また、上司からの嬉しい関わりとして、入職時に上司と何でも伝えられる交換ノートを作ってくれた。自分がしんどい時に話かけてくれ、先輩の体験談を色々話してくれた。支援の中で自分が感じた事をゆっくり聴いてくれ、あなたにしか出来ない事があるのだと、認めてくれた。「どんどん失敗していいんだよ、何かあったら私の出番だから」と声をかけてくれた。普段の関わり、会話の中で、このままの私でいいんだと感じさせてくれる環境作りをしてくれている等、暖かい話を聴くことが出来、理想の先輩、上司像がみえてきました。

 新人に完璧さや高い理想を並べる前にできること
 完璧や、高い理想を並べる事ではなく、利用者さんと同じに、一人の人間、ソーシャルワーカーとして後輩に寄り添っていく事が先輩として、ソーシャルワーカーとして大切な事なんだと、改めて勉強させられました。その他にもメンバーが、職種や事業所を越え、集まり、勉強会等を開きソーシャルワーカーの役割を伝えていく取り組みや、互いに相談し合える寄り添いホットラインを行なっている等、それぞれに掲げている目標や思いを持って、自分らしいソーシャルワーカーを模索している事を知り、勇気づけられました。

 今回のテーマにもある様に、「人との繋がりから生まれるもの」を今回のカンファレンスで改めて実感する事が出来ました。学んだ事を明日から、私らしく、目標や課題に取り組んでいきたいと思います。                      
                                                                                                            (社会福祉士)

2012年8月9日 更新 カテゴリー:私と仕事

私と仕事(精神科病院で働く精神保健福祉士)

                           川上尚子さん(2006年卒)

 まずは、これまでの仕事を通しての想いを文章にする機会を与えていただいたカンファレンスの場と、また、そんな私のまとまらない気持ちを基にディスカッションをして新たな気付きを与えてくれた参加者の皆さんに感謝をします。

困難な状況を抱えながら懸命に生きておられる方を支援するとき心に思うこと

 私は精神科病院の医療福祉相談室のソーシャルワーカーとして入職し、もうすぐ丸6年になろうしています。業務としては、入院・外来問わず患者さんの生活・療養上の相談や退院に際しての相談に乗ったり、それに必要な関係者との連絡調整を行ったり、受診・入院相談の対応と調整を行ったりしています。患者さん本人や家族や関係者と一緒に、精神科の病気を持った方がどうしたらその人らしく生活が出来るかを考える仕事です。

 2011年の9月の定例会で作成したケースレポートの内容を考えるとき、私は迷わず、ソーシャルワーカーが行うクライアントへの関わりを、自分自身がどう考えて仕事をしてきたかということをテーマにすることを決めました。そしてその中で、先輩からもらった『ソーシャルワーカーはいつも迷いながら関わるもので、その関わりがよかったかどうかなんてその人の人生が終わった時にしか分からない、お礼を言われたり達成感を得たりすることを求めてはいけない』という言葉を交えて、ひとつの事例を紹介することにしました。少しストイックすぎるのかもしれませんが、私が関わるクライアントさんはみな、本当に困難な状況を抱えながら懸命に生きておられる方ばかりですから、むしろすっきりと華麗に支援をしてしまえることのほうが怖いと思うのです。

患者さんが自分の生活を自分のものにしていく

 少し話が変わりますが、以前、同じ病院の看護部の役職者から「仕事をしていてどんな時が一番うれしい?」と聞かれたことがありました。私は「患者さんに“もうあなたがいなくても大丈夫”と言われているような気持ちになるときです」と答えました。具体的に言うと、始めは私が紹介してデイケアに通うようになったとしても、そのうちに患者さんが逆に私にデイケアのことを教えてくれるようになるなど、患者さんが自分の生活を自分のものにしていってくれていることを感じたときのことです。質問をした人は「看護師は自分が役に立ったときのことを挙げる人が多いのに、その逆なんだね。なんかいいね。」と言ってくれました。きっとそれは、クライアントの“人生”と向き合うというソーシャルワーカーの姿勢を学生の時から学んできたからだと思います。だからこの言葉は私にとって嬉しいものでしたし、これからもそんな気持ちで関わっていきたいなと思えました。

集い、学び、行動する意欲

 ケースレポートの最後にはソーシャルアクションについても触れました。私は元々人と関わることが好きで社会福祉学科への進学を選んだので、大学の時は制度や政策などの勉強はそこそこに、ボランティアなどに打ち込んでいました。しかしいざ現場に入ると、政策の変化で患者さんの生活が大きく変わることや、精神障害者が地域で暮らすにはハードルがたくさんあることを目の当たりにしました。多くの当事者や先輩方は、そんな現状を変えるために集い、学び、行動していました。それだけ精神障害者を取り巻く現状が悲惨だということが言えるわけです。そんな中、私もいずれはそういうことがきちんと出来る人になりたいと考えが変わり、仕事は続けながら大学院の総合政策科学研究科に入学し、昨年卒業しました。「社会的入院の解消」「地域移行」と言うけれど、そこには本当にたくさんの問題が立ちはだかっていて、一筋縄ではいきません。でも、これからも努力をしていきたいと思います。

つながりを大切に、末永くこの仕事を

 仕事をしながら、疲れたり嫌になってしまったりすることはもちろんあるけれど、やめたいと思ったことは一度もありません。そうやってたくさん悩みながら仕事をして、たくさんの人と出会えるソーシャルワーカーという職につけて、本当に良かったと思っています。これからも、自分の職場の中だけでなく、他機関の精神科ソーシャルワーカーのつながり、大学の同窓生とのつながりなどを大切に、末永くこの仕事をやっていきたいなと思います。

                      (精神保健福祉士・社会福祉士)

※2011年9月の定例会にて川上さん作成のケースを用いてケース討議を行いました。

2012年2月28日 更新 カテゴリー:私と仕事