同志社大学社会福祉教育・研究支援センター Doshisha Education Research Center of Social Welfare同志社大学社会福祉教育・研究支援センター Doshisha Education Research Center of Social Welfare

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カテゴリー 【私と仕事】

私と仕事(精神科クリニックで働く精神保健福祉士)

 2013年2月の定例カンファレンスでケース提供してくださった北山さんが、カンファレンスの後で書いてくださった文章です。

                           北山紗恵子さん(2012年卒)

わけがわからない新人としての一年目
 新人ソーシャルワーカーとしての毎日は、わけがわからないまま矢のように過ぎ去っていき、気がつけば一年を迎えようとしています。一旦立ち止まって、日々自分がやっていることや感じていることを言語化する機会を与えていただいたことに心より感謝します。

 私は、アルコール依存症専門クリニックのソーシャルワーカーとして勤務しています。カンファレンスでは、アルコール依存症という病気や治療について、また自助グループについてなど、様々な質問をいただきました。参加者の皆様のアルコール依存症への関心の高さに驚くと同時に、アルコール関連問題は広い範囲に渡って存在しているということを痛感しました。 

アルコール依存の生活への影響
 アルコール依存症は「治る」病気ではないため、治療は「断酒を継続すること」が目標となります。クリニックでは、断酒の動機付けや断酒継続のための精神療法を行っています。また、アルコール依存症は身体を壊すだけでなくその人の生活にも著しい影響を及ぼす病気であるため、生活問題に対する支援も非常に重要です。そのため、ソーシャルワーカーに求められている役割は非常に大きいものであると感じます。

アルコール依存症専門クリニックでのソーシャルワークのやりがい
 
私の仕事は、クライエントが断酒を継続すること、その人らしい生活を再構築すること、その人らしい人生を生きていくこと、を目指した支援です。具体的な業務としては、クライエントとの面接、関係機関との連携、入院依頼、電話相談、デイケア・ミーティングの運営、家族向けプログラムの運営、などがあります。ソーシャルワーカー一人で出来る事はほとんどありませんが、クライエントと一緒に悩み考えながら、他職種や他機関と協力しながら、クライエントが新しい人生を歩み始めるお手伝いをしています。

  酒なしで人生をどう生きていくのか、酒で失ったものをどのように取り戻していくのか・・・断酒を継続するためには、自分と真摯に向き合い続けることが必要になります。そんなクライエントの姿を目の当たりにしていると、私も自身の生き方や自分というものについて深く考えずにはいられません。アルコール依存症者の自助グループに足を運び、体験談に耳を傾けると、人間としての生き方のヒントがたくさん得られます。私も、自分自身を振り返ることができる大切な時間です。このような経験が常に出来ることはソーシャルワーカーとしても、一人の人間としても幸せだと感じています。

私がカンファレンスに参加する意義
  今回のカンファレンスでは、私が実際に悩んだケースをひとつ提供させていただきました。このケースに関しては、これまで自分の支援方法もダメ、結果もダメ、ただ自分を責めることしか出来ていませんでした。今回勇気を出して発表させていただいたところ、自分では考えもしなかったような意見や考え方を参加者の方々からたくさんいただきました。こりかたまっていた視点からふっと解放され、ケースの結果やクライエントそのものをポジティブに捉えることが出来たように思います。

 クライエントの良いところももっと見つけていきたいですし、そのために自分の良いところももっと見つけていきたい。そのために、このようにありのままを語る場を、これからも大切にしていきたいと思います。   (精神保健福祉士・社会福祉士)

2013年4月24日 更新 カテゴリー:私と仕事

私と仕事(総合病院で働く社会福祉士)

 2012年12月特別講座で事例提供をした井上さんが、事後に書いてくださった文章です。

                             井上未希さん(2010年卒)

病院で働くソーシャルワーカーの実際
私は、京都市内の急性期病院でソーシャルワーカーとして日々クライエントの相談支援を行っています。医療機関に属するソーシャルワーカーをMedical Social Worker(MSW)とも呼び、院内では“MSWの井上さん”として仕事をしています。

 主な仕事内容ですが、まず当院で一番多いものは退院支援です。高齢社会の現代において地域の病院にはやはり高齢の患者さんがたくさんおられます。病気や入院したことにより、入院前の状態から変化することが往々にしてあります。例えば、医療処置が必要になったり、ADLが著名に低下したりすることで、支援体制を整えなければ元の自宅へ帰ることが困難なことがあります。私たちは、今後の生活をどうしていきたいのか、ご本人やご家族と現状や希望を踏まえ、生活について一緒に考えていきます。中には、様々な社会資源を利用して直接自宅へ退院できる方もいますが、自宅へ帰る為にリハビリが必要な方や生活施設への入所を希望される方には適切な施設へ繋がるよう調整も行います。その他経済的な事(医療費の支払いが困難)や心理社会的問題(療養上不安な事や家族の困りごと、時には虐待ケースも)の相談支援もあります。とても簡潔に記載しましたが、どんな支援であっても結果がすべてではなく、問題解決に向かう過程を一緒に踏んでいくことがソーシャルワーカーとしては重要なところだと思います。

医療の中での唯一の福祉職
 医療現場の中にある唯一の福祉職として、クライエントの生活や権利を大切にしていくために院内外の他職種との連携は必須であり、私はそういった面でもやりがいや魅力を感じます。病院という一般市民に身近な施設だからこと生活に直結する問題が生じます。病気や怪我をしても、病気や障がいを持ちながらでも、その人らしい生き方ができるよう支援をしていくことを目標に、日々クライエントと向き合っていきたいと思います。

専門職としての私を磨く事例検討
 さて、去る12月に参加した特別講座では、私は事例提供者として参加させて頂きました。事務局から事例提供の依頼があった時点では、「事前準備は全く必要ない」とのことだったので、当日までどんな事例検討になるのか、本当にこの事例でよいのか…など不安でした。日常よく目にする事例検討は、紙ベースで資料を準備し、年齢・性別・疾患・家族状況(ジェノグラム)・経過・アセスメントなどをあらかじめ記載したものを用意し、当日はさらに細かく情報を口頭で述べていくという進め方がほとんどです。しかし今回は、クライエントの情報は最小限(年齢・性別・特徴程度)の提供にとどめるように講師から冒頭で指示があるところから始まりました。通常の事例検討を、多くの情報から「頭で考える事例検討」と表現するとすれば、今回の事例検討は「身体で体験する事例検討」という感覚なのではないでしょうか。おそらくこれは実際にやってみないと理解しにくいかと思うので、文章で十分に伝えきれないことが残念です。

家族造形法の面白さ
 事例提供に選んだケースは高齢男性一家族でしたが、私は参加者にこの家族の役をお願いし、それぞれにポーズをつけていく(彫刻していく)ことをしました。私自身が捉えているこの家族像を立体的に表現していくので、目線や距離、動き等も重要でした。彫刻を終えた後、今度は役が当たらなかった人たち(ギャラリー)が、出来上がったもの(作品)を観る時間が設けられます。その後、役の人とギャラリーがそれぞれ感じた事を事例提供者へフィードバックします。その後は、役を他の人がやってみたり、今の家族関係を良くするにはどうすればよいのかなどという視点でさらに作品を展開させる(ほかの役の登場)こともさせて頂きました。実際に、私は形作るだけでなく、登場人物の役にもなり、粘土になる体験もしました。

 実際にやってみて、思わず「おもしろい!」と言ってしまったほど不思議な刺激をたくさん受けました。最小限の情報提供から始まったはずなのに、今まで私自身が事例の担当者として感じていたことを役の人・ギャラリーも感じていたり、実際に役になってみないと想像もできなかった思いがけない感覚を体験することができました。また、より良い関係性への展開を考える際に、役の立場ごとに思い描く理想の形が異なることにも改めて気づかされ、実際の支援の際に「見えていない部分」が大きかったということを再認識させられました。

学生時代に実習で学んだ「in the shoes」の感覚
 学生の時に社会福祉実習の授業で「in the shoes」という共感の感覚の考え方を学びました。他人の靴に足を入れてみた時に、多少なりとも違和感がありますが、実際にその方の感じている感覚に支援者自身を投じてみる…という演習だったと思います。今回の事例検討は、まさにそれに近い方法ではないかなと思いました。立体的に表現されたものがそこに在るということで、紙ベースではなかなか掴みにくい距離感や空気感が体験でき、さらに情報が少ないからこそより感覚が研ぎ澄まされ、あらゆるものをフィードバックしようしあう空気がその場に生まれ、支援のヒントがいくつか得られたように思います。                                      (社会福祉士)

 

2013年2月15日 更新 カテゴリー:私と仕事

私と仕事(管理監督者として働く社会福祉士)

 2012年10月定例カンファレンスで報告を担当した池原さんが、事後に書いてくださった文章です。

                             池原智和さん(1999年卒)

管理監督者としての正直な気持ち
 妙な色気を出して、ソーシャルワークという狭義の枠に囚われて、参加者の皆様がどう感じるかを変に考えるのではなく、正直に、管理監督者の私を語って本当に良かったと実感しています。元ブルーハーツの甲本ヒロトは、「言いたいことは言う。その時は、心を込めて言う。」と言っています。言いたいことを、心を込めて言うには、そこにリアリティがないとダメです。その為には、今の自分に真摯に向き合い、溢れ出る何かを文字にし、口に出すことが重要です。そういう意味で、今回は、今、まさに私が感じていること、考えていることを表現したことに、何かの意味があったのだろうと恥ずかしながら思っています。何よりも、一心不乱に、慣れない仕事に邁進し続けたこの1年6ヶ月…何が正しいのかさえも分からなくなり、常に、職員一人一人のことと組織全体のことを天秤にかけなければならず、自分の信念も貫き通せないような感覚に陥りそうになった時期もありました。そんな中、今回の発表が、管理監督者としての私のこれまで(良かったことも悪かったことも全部含めて)を見つめ直す機会になったことについて、つくづく私はラッキーな人間だなぁと感謝しています。

後輩たちと感じた一体感
 実際の発表、意見交換では、私の方がお土産をもらいました。決して、自分だけが苦しいのではありません。この業界でフラフラになりながらも、希望を捨てずに、必死に踏ん張っている後輩たちの姿はキラキラしていて、ある種の一体感を感じました。皆しんどいし、皆楽しいことを体験しているし、皆良い仕事をしたいと思っている。それは、ご利用者様の為、ご家族様の為、地域の方々の為…、そして自分の為。どの立場でも、場所は違っても、皆一緒に頑張っていることを再認識できました。暖かい安心感に包まれたような感覚でした。
 私は、これからもこの業界にしがみつき、「自分が『ソーシャルワーカーとして』正しいと思うこと」をやり続けられるように、自己研鑽していかなければいけません。逃げだすようでは、私は私でなくなってしまうし、逃げだすのなら、もっと早くにいくらでもそのチャンスはあったのだから…。

自分の立場で責任を取ろうとする覚悟と勇気
 今のセンター長という職のあと、どんな仕事が待っているかは分かりませんが、どんな仕事であっても、真摯に引き受けられるよう、権威、権限を持つ者の最低条件としての勇気とどんな場合でも自分の立場で責任を取ろうとする覚悟を持っておきたいです。そして、その仕事の中で、私が培ってきたソーシャルワークを一人のソーシャルワーカーとして展開していけるように、不平不満を言わず、今の仕事に向き合っていくことにします。

 この定例カンファレンスの意味、意義は、参加して存分に体感することができます。この場を知り、参加できていることに感謝するとともに、傲慢ながら、微力ではありますが、このカンファレンスで私ができることをこれからも精一杯やりたいと誓いながら、結びとします。 

                      (社会福祉士・介護支援専門員)
  

2012年11月21日 更新 カテゴリー:私と仕事