12月特別講座 開催報告
去る12月6日、本年度初の外部講師による特別講座を開催しました。講師の本学心理学部早樫一男先生は、長く児童福祉行政の現場実践に取り組んでこられましたので、ソーシャルワーカーという対人援助職のことをよくご理解いただいています。夏に、市内の障害児福祉施設での事例検討会でお目にかかった際に、ジェノグラムを基礎に、参加者参加型の討議をファシリテートされながら、事例の背後にある課題に迫っていく先生の進め方に触れ、「本学でもぜひやっていただきたい」と思いました。その後、御願いをしたところ、一つ返事で快くお引き受けいただき、本日の開催となりました。
早樫先生との事前打ち合わせは、新町キャンパスから、新町通を下がってすぐのところにある同志社大学心理臨床センターで行いました。児童相談所の心理職、所長職、児童自立支援施設の施設長などを務められたご経験をうかがいながら、特別講座での研修の企画について相談をすすめました。ジェノグラムを中心にした研修を当初は予定していましたが、心理・福祉職に長く実施している家族造形法の研修の実際を詳しくお聞きする中で、「ぜひ、やっていただきたい」と思い、企画が決まりました。
普段、対人援助職が関わっている家族や職場の人間関係、何でもよいそうです。自分が取り上げたいと思う人間関係について、ジェノグラムや簡単な状況設定の情報提供を受けるだけで、参加者全員でイメージを膨らませつつ、人を粘土に見立て、その場で作りあげていく研修です。事例提供者の情報提供に耳をすませ、参加者同士の対話によって、人間関係を作り上げていく作業では、頭だけでなく、言葉を発し、体を動かし、その状況を感じることの連続であり、2時間があっという間にすぎ、終了後、からだには不思議な爽快感が残るものでした。
●講師 早樫一男先生(同志社大学心理学部教授)
●タイトル 「家族造形法を用いた事例検討」
●参加者 8名(一般病院、精神科クリニック、老人保健施設、社会福祉協議会、知的障害者通所施設、市役所勤務の社会福祉士及び精神保健福祉士)
●当日の風景から
演習のはじめと最後には、チェックインとチェックアウトを行いました。丸くなって椅子に腰掛け、今日、この研修に参加しようとしている今の自分の体調や気分の状態を目をつぶって一人一人振り返ります。心と体を存分に使う2時間となるので、演習の入口と出口ははっきりとすることが求められるのだと思いました。
講義の後、「まずは体験してみるのが一番!!」と先生がおっしゃられ、事例提供役、事例に登場する登場人物役(つまり、粘土役)、観察者役に分かれ、事例の世界に入っていきました。
2013年2月15日 更新 カテゴリー:開催報告
10月例会報告
去る10月31日、ケーススタディ編(ソーシャルワーカーの当事者研究編)第三回を開催しました。
今回の発表担当の池原さんは、定例カンファレンスで発表するのは、昨年に続いて二回目となります。ソーシャルワーカーが管理者となっていく過程において抱えるさまざまな思いを聞けるということで、今晩もたくさんの卒業生が集まってくださいました。池原さんの、率直な語り口が、参加者みんなをひき付けました。誰もが、社会福祉の現場で働く喜びを改めて問い直し、再認識したひとときになったのではないかと思います。
●報告者 池原智和さん(1999年卒 通所介護事業所・居宅介護支援事業所・地域包括支援センター 所長 社会福祉士・介護支援専門員)
●報告テーマ「管理監督者にとってソーシャルワークを実践し続けるとは?~組織、職員と関わり続けるということ~」
●参加者 13名
(精神科病院、一般病院、老人保健施設、障害者通所施設、公務員福祉職などとして勤務する社会福祉士、精神保健福祉士など)
●当日の風景
当事者研究は、事前にまとめてきた資料をもとに、まずは報告担当の池原さんから40分ほどかけて、じっくり報告されました。
今は、3つの事業所の所長として管理する立場についている池原さん。資料に書かれているキーワードには、「折り合いをつける」「約束」「誠実さ」「創り出す」などの言葉が挙げられ、管理監督業務とソーシャルワーカーであり続けることのさまざまな葛藤が語られました。
みんなからは、いろんな感想や質問がどんどん湧いてきました。
「措置の時代と介護保険に突入した時代と、どう違いますか?」
「所属部署は愛せるのですが、組織となると愛せないところもあるんです」
「数年先を見ながら仕事をするということに、今日気づきました。」
「今日の報告を聞いて、管理者になりたくなってきました。
「池原さんが部下の時代、どんなんだったんですか。」
そして、池原さんからも参加者にぜひ聞いてみたい問いかけが語られました。
「役職者になって、どんなことを実現してみたい?!」
池原さんから参加者に提案された、ソーシャルワーカーであり続けるための取り組みは4点ありました。一つは常に自分で考えるという姿勢を持ち続けること。第二に、情報には貪欲に、そして学習を惜しまないこと。第三に、ご利用者様には常に正直で真面目であること。そして最後は、専門家としてのプライドを持ち、時には捨て、時には懸命に誇示すること。管理者であっても、この姿勢は持ち続けることができることを参加者に示してくださいました。そして、管理監督者になるということは、ある意味、第一線から離れることをも意味しますが、「自分がしなくても、自分がするのと同じような援助実践が展開されることはもちろん、ある程度のサービスの質を一定担保させ続けることが今の私の仕事です」と力強く語っていた姿が、とても印象的でした。
2012年11月21日 更新 カテゴリー:開催報告
9月例会 同志社大阪サテライト出張開催
去る9月15日、本年度初めての大阪出張カンファレンスを開催しました。「私のケース討議」編の三回目にあたる今回は、普段の京都カンファレンスとは異なる顔ぶれが揃い、新たなネットワークづくりとなる会となりました。時間はいつもより30分長い、2時間半とっていたので、お二方に「私のケース」を提供いただき、じっくりと討議することができました。大阪、兵庫にお住まいの卒業生が多かったですが、富山からご参加いただいた方もいました。
●ケース担当
千品友理さん(2005年卒 母子生活支援施設 社会福祉士)
天谷仁美さん(2012年卒 回復期リハビリテーション病院 社会福祉士)
●ケース教材
「ここで何ができるのか、ここは何ができるか」(千品さん)
「やりきったと思える支援」(天谷さん)
●参加者 12名
(一般病院、精神科病院、公務員福祉職、市社会福祉協議会、パーソナルサポートセンター等勤務の社会福祉士、精神保健福祉士など)
●当日の風景
今年の三月に同志社の大阪サテライトが移転し、初の開催となりました。JR大阪駅より徒歩3分程度、ビルの高層階にある眺めのよい教室で、普段、京都のカンファレンスになかなか参加できない卒業生が集まり、討議を繰り広げました。
まずは、現場で働き初めて一年目の天谷さんのケース討議では、参加者それぞれの一年目の経験、「やりきった」と思えたそれぞれの経験を披露してもらいながら、日々の不安や迷いとうまいことつきあっていくアイデアをたくさん出し合いました。天谷さんの今の心境にみんなで近づきながら、明日からさっそく取り組めそうなアイデアがたくさんでてきました。
「相談してみる」「同期の仲間と話してみる」からはじまり、「(堂々と、いいなあと思う先輩を)まねてみる」「今まで何となくやって対処してきたことを振り返り、他のケースでもできそうなことを再度意識的にピックアップしてみる」「事例を検討し、自分の中のバリエーションを増やしていく」などなど、です。
児童福祉現場で働いて7年目となる千品さんのケース討議では、組織の中で役職につく中で、ソーシャルワーカーとしての自分の成長について戸惑い、悩む、中堅実践家の立場からのケースをじっくりと読み込みました。後輩を束ねていく立場でありながら、いかにしてソーシャルワーカーとしての自分を奮い立たせていくのか。千品さんの誠実な語りが、参加者それぞれに、自分をじっくり振り返る機会を与えてくれました。組織で仕事をするということ、一緒に取り組んでいくという意識、安心して仕事をする環境作り(責任は一人ではもちきれないこと)などを、参加者の貴重な経験から考えることができました。
大阪サテライトであれば、大阪南部、兵庫県からの参加がしやすくなります。また、今回は平日の夜ではなく、土曜の夕方開催だったので、参加しやすい方もたくさんいました。年度内には、もう一度くらい、足をのばして、土日の出張開催に取り組みたいと思います。
2012年10月30日 更新 カテゴリー:開催報告