私と仕事(更生施設で働く社会福祉士)
富井宏美さん(2009年卒業)
私のつたない言葉を全力で傾聴してくださったケース討議参加者の皆様に感謝いたします。
「理論なき実践は暴力、実践なき理論は無力。」
これは私が福祉の世界に入った頃大切な人に教えていただいた言葉です。(同志社大学社会福祉教育・研究支援センターホームページのトップにも書いてありますが)私は最初の頃、何かあるとすぐ教科書を広げて悩んでいました。ただ、最近は違っていて、富井宏美理論があるのです。
更生施設での仕事
利用者さんと過ごすにつれ「本人の意思とは関係なく、どん底に落ちてしまった」人が、とても多いように感じます。確かにそれは本人の生き様が悪い。と言われればそれまでなのですが、本人を取り巻く様々な要因があるのです。私は、更生施設の指導員です。利用者さんと「これから」を考えるのが仕事です。
私の仕事は、利用者さんが自分の人生の主役に戻っていくための業務だと思っています。自分一人で自分の人生に向き合っていくにはしんどすぎる。(利用者さんは身寄りのない人が又家族はいても絶縁状態の人がほとんど。大多数が自分の人生をあきらめています。)だから私たちが自立した大人の心境に帰っていくのをサポートしていきます。自立(卒業)とは、外部(社会)と適切に接触し、組み込まれていくことだと思っています。今まで誰にも共感してもらえなかった(又は言えなかった)ことを傾聴し、受容していく事で居場所をつくっていくところから始まります。
何かしら新しいことに挑戦し、感動を人と分かち合う。その先にあるものが本当の幸せで友好な対人関係の構築だと、自分に自信を持ち誰のせいにするでもなく自分のために、自分で自分の幸せはつかんでいくのだと時間をかけながら自覚してほしいと思っています。
「通過施設」でのソーシャルワーク
適切な人間関係の構築。これは、社会で生きていくうえで避けては通れません。ですから私は指導員としてある前に、ひとりの人間として富井宏美としてありたいと思っています。一緒に笑って、泣いて、喜んで、時にはケンカもするけれど、最終的には、私だけでも、理解者でありたいと思っています。一人でも自分にそのような人がいるのといないのでは大違いなのではないでしょうか。卒業しても、その後何があっても、私に会いに来てくれる、それだけで私は涙が出てしまうのです。
更生施設とはこんなところ
更生施設がどのような場所か、うまく説明ができなかったと思います。とても複雑な施設ですが、平たく言うと、広義の意味でのホームレスの方が入所し、在籍期間中に抱えている様々な問題を軽減し次の方向性を決め、つなぐ。というものです。その業務は多岐にわたります。「生活の快」(五感を満たす活動)から全ては始まります。利用者さんにとっては生活の場、私にとっては職場です。通過点に過ぎません。ですから何かしら、入所してよかったと振り返った時思ってほしいと思っています。どん底を経験することを、糧にしてほしいと思っています。
福祉の業界はまだ門が狭く、3K+1K(汚い・危険・キツイ・給料安い)と言われています。私は、(工夫・感動・キラキラ)の3Kだと思っています。私は利用者の皆さんに私の存在意義を見出してもらっているのです。実は私が救われているのかも知れません。だから、わたしは、キラキラ・・・・・なのです。
最後に、このような場を与えてくださったコメンテーターとディスカッションリーダーに感謝いたします。本当にありがとうございました。
(社会福祉士・精神保健福祉士)
2012年1月5日 更新 カテゴリー:私と仕事
1月定例会のお知らせ
卒業生のみなさま
新年あけましておめでとうございます。今年も引き続き定例カンファレンスをよろしくお願いいたします。
今月は、今年度社会福祉現場で働き始めた新人ソーシャルワーカーにケース提供を御願いすることとなりました。寒さますます厳しくなってきましたが、お一人でも多くの卒業生にお集まりいただきたいと思います。討議にご参加いただけますようお待ちしています。
日にち:2012年1月25日(水)
時間 :19時~21時(終了予定)
場所 :同志社大学新町キャンパス渓水館1階会議室
ケース討議:「医療機関で実習したことがなかった私」
2012年1月5日 更新 カテゴリー:今後の予定
過去のカンファレンスより(出張カンファレンス)
定例のカンファレンスは、京都で毎月開催されますが、年に数回は、京都から飛び出して、出張開催をする試みもしています。昨年度は2月に大阪天満研修センターにて、今年の9月には同志社大学が梅田にもつ大阪サテライト教室にて開催しました。大阪、兵庫を中心に13名の卒業生が集まりました。
●参加者 13名
(市役所、一般病院、都道府県、市町村社会福祉協議会、県精神保健センター、障害者就労支援施設、精神科病院、母子生活支援施設、障害者通所介護施設などに勤務する社会福祉士、精神保健福祉士)
●ケース提供者感想 (岡田剛さん 2009年卒 一般病院 社会福祉士)
今回のカンファレンスで、私のケースを発表する機会をいただいてありがとうございました。発表依頼をいただき、その依頼を受けた当初、大学からの実習生受け入れ期間中であることや、上半期終盤にかかっているという理由で、仕事がオーバーワークでした。依頼を受けたことを後悔しました。もっと落ち着いたときに依頼を受ければよかった、と。
しかし、ケースの作成をしていると、自分の気持ちの整理がつき、これまでの自分を見つめ直すことができました。それは、入職してから現在までのことを思い出し、それを文字として表現することで、自分自身の中にしかなかった想いをアウトプットすることができたからではないかと今では思います。
入職してから今まで、私の中ではとても大きな分岐点がたくさんありました。しかし、たくさんの分岐点が次々とやってくる中、毎日の業務を遂行することに精一杯だった私は、一度も自分の気持ちに向き合い、自分をケアしてやる機会がありませんでした。そして、今回ケースを作成している時に、そのことを初めて認識することができました。
カンファレンス当日、多くの先輩や後輩がいる中、私が作成したケースがディスカッションリーダー役の先生から読み上げられ、横で聞いている私は照れ臭くもあり緊張もしました。しかし、先輩・後輩共に発表に対して馬鹿にすることも、蔑むこともなく、真剣に耳を傾け、素直な想いを話して下さいました。仲間やコメンテーターの先生から、貴重な意見や今後考えるべき課題をいただくことができました。
このように、悩み・落ち込んだときや自分自身を見つめ直すときに、安心して想いを仲間とシェアできる場所があるということは、非常に大きな心の支えになると改めて感じました。職場が大阪市内のため、京都でのカンファレンスには参加することが出来ませんが、大阪で開催される際は次回も是非出席させていただきますのでよろしくお願いします。最後になりましたが、今回発表の機会をいただき誠にありがとうございました。
●参加者感想
◎今回は、少しの勇気を出して参加させていただきました。皆のいろんな話を聞いて、やはり異なる職場の人との交流は、普段特に意識していなかった様なことも思いおこさせてくれ、良い経験となりました。ソーシャルワークってなんだろって、福祉ってなんだろうって、考えることがあって、でも常にある問いかけがなくなるとあかんなと思います。協はありがとうございました。(2003年卒 大阪府)
◎福祉職のやっていること、自分が携わっているものについて形に残すことは今の自分のためだけじゃなく、組織におけるソーシャルワーカーの立ち位置、これからに必要なことだと改めて思った時間でした。(2007年卒 兵庫県)
2011年12月1日 更新 カテゴリー:参加者感想