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あるべきソーシャルワーカー像を探求する。こうありたいソーシャルワーカー像を語りながら。

1月 きょうと介護・福祉ジョブネットコラボ企画 報告

 去る1月26日、きょうと介護・福祉ジョブネットとのコラボ企画として一回限りで開催しました公開カンファレンス(スーパービジョン)には、京都府下より13名の実践家の方にお集まりいただきました。

 通常の定例カンファレンスと同じく、仕事終わりの19時からの開始を目指して、京都南部から、また京北町や亀岡市から駆けつけてくださいました。高齢者分野の方もあれば、障害者分野の方も、勤務して9ヶ月目の方から数年にわたる方まで、多様な参加が集結しました。

 ケースは、高齢者分野でケアワーカーとして働く方と、障害者分野で相談員として働く方と2名に作成を御願いし、2時間で2ケースを用いたケース討議を行いました。皆さん、とても熱心で、開始30分前にはほとんどの方が会場に集まってくださいました。名刺交換をしたり、講師の私たちと話をしたりしましたが、主催側のきょうと介護・福祉ジョブネットの3名のスタッフの方々が来場者に気さくに声をかけたりしてくださったので、リラックスした雰囲気で始められたと思います。

 討議を始めた当初は、メンバーにまだなじめなかったり、進め方がどうなるのかわからなかったりで参加者に戸惑いもみられました。しかし、「じっくりとみなさんの意見交換を聞かせていただくのが私の役割です」とコメンテーターが口火を切ると、ディスカッションリーダーのリードにのって一気に討議が白熱、場が温まっていきました。あっという間の2時間でした。

 以下は、きょうと介護・福祉ジョブネットさんが取りまとめられたアンケート結果です。地元の社会福祉実践家と養成校や大学等が、福祉人材の定着のために共に取り組む機会がますます増えればと思います。

     
“公開スーパーバイズ  アンケート集計結果(2012/1/26開催)”     
  
受講者数  13名  回収数 13枚  回収率 100%     
     
Q1、所属法人・事業所の種別をお知らせください。     
高齢  9名 障がい 4名 その他 0名   合計13名 
     
Q2、現在、所属の事業所は、勤続何年目ですか?     
1年目  3名 2年目 4名  3年目 2名   4年目以上 4名   合計 13名
     
Q3、過去にスーパーバイズを受けられたことがありますか?     
初めて 12名  1度ある 0名  2~3度ある 1名   合計 13名 
     
Q4、本日のスーパーバイズについて感想をお聞かせください。     
大変参考になった 11名  ある程度参考になった 2名  参考にならなかった 0名  合計 13名
     
大変参考になった と答えた方の記述欄】     
・自分が持つ悩みについて、色々な視点からお話を聞けたことが 本当に参考になりました。目からウロコです。技術や知識だけでなく 「気持ちをどうもっているか」が大切なことで、今後の自分の仕事の仕方に 活かしてゆきたいと思いました。     
・無いと思っていた引き出しをいっぱい見つけることが出来ました。     
・様々な人達と話して、色々な価値観や自分と同じだと感じられる部分を知ることができたからです。     
・自分の職場の人間の意見をきくことはあるのですが、他の施設の方の意見というのは、とても新鮮なものがあったり、 逆に同じことを思っていたのかという気づきもあって、とても有意義な時間を過ごせました。     
・自分を振り返ることができました。  いろんな困難をかかえることで分断された暮らし、家族とのかかわり、地域とのかかわりをつむぎなおす支援ができたらと思います。     
・色々な人の考えを聞くことができて良かった。いろんな考えをきくことで 「こんな考え方もあるんだな」とすごくおもしろかった。話すことで自分を再確認できるように思いました。     
・参加されたみなさんも悩みながら、失敗しながら日々お仕事されていることを知り安心しました。     
・自由な語りからテーマに視点をしぼる、課題につなげる・・とても参考になりました。 空閑先生の「語りつぐことがスーパービジョン」も印象に残りました。     
・楽しみながら参加できました。自分自身の気持ちや思いも整理できたように思う。     
・様々な方と意見を交わし、自身の気付きが増えた。     
・自分と同じ経験年数の方のリアルな経験、感じていることを知り、共感できたのがよかったです。改めて自分のこれまでのことをふり返れて、自分が今行っていることの 価値を少し見いだせた気がします。少し自信がつきました。     
     
ある程度参考になった と答えた方の記述欄】     
・実践できるよう、まず振り返ってから参考になったと言えるようになりたい。     
・全く知らない職場の人の話は新鮮だった。同じ職場の人の体験など聞いていて 共感するところも多く、また、ケアマネの方や相談員の方の話も参考になった。     
     
Q5、本日のスーパーバイズの参加人数・規模は、適当と思われますか?     
適当である  10名 もう少し多い方が良い  0名 もう少し少ない方が良い  3名  合計 13名 
     
適当である と答えた方の記述欄】     
・多すぎず、少なすぎず、落ち着いて集中して参加できたように思います。     
・話しやすい人数だと思います。     
・ゼミみたいで楽しいです。(笑)     
・あまり多いと緊張するので・・・他の人の名前も覚えられなくなります。     
・皆さんの意見が聞ける人数だったのですごく良かったです。     
・話しやすい雰囲気でした。     
・話しやすかった。     
・多すぎると、話す内容が(規模が)広くなり、話す内容が定まりにくくなる。     
・もう少し参加者が少なければ1人ずつ意見を回さず意見交換できたのかな、とも 思いますが適当です。     
・聞く事にも集中力がいるが、今回ぐらいの人数なら聞けたと思う。     
 (もしかすると、もっと少ない人数ならば、さらに自由な発言もあったかもしれない)     
     
もう少し少ない方が良い と答えた方の記述欄】     
・全員の話をしただけで、そこから自由に話す時間がなかったので。     
・たくさんの視点からの意見を聞けてよかったのですが、 私自身話すことが苦手なので、少し話しづらかったです。     
・こういうことに慣れる必要があるなと感じました。     
・フリートークもしてみたかったです。
   
     

 

2012年2月28日 更新 カテゴリー:開催報告

私と仕事(精神科病院で働く精神保健福祉士)

                           川上尚子さん(2006年卒)

 まずは、これまでの仕事を通しての想いを文章にする機会を与えていただいたカンファレンスの場と、また、そんな私のまとまらない気持ちを基にディスカッションをして新たな気付きを与えてくれた参加者の皆さんに感謝をします。

困難な状況を抱えながら懸命に生きておられる方を支援するとき心に思うこと

 私は精神科病院の医療福祉相談室のソーシャルワーカーとして入職し、もうすぐ丸6年になろうしています。業務としては、入院・外来問わず患者さんの生活・療養上の相談や退院に際しての相談に乗ったり、それに必要な関係者との連絡調整を行ったり、受診・入院相談の対応と調整を行ったりしています。患者さん本人や家族や関係者と一緒に、精神科の病気を持った方がどうしたらその人らしく生活が出来るかを考える仕事です。

 2011年の9月の定例会で作成したケースレポートの内容を考えるとき、私は迷わず、ソーシャルワーカーが行うクライアントへの関わりを、自分自身がどう考えて仕事をしてきたかということをテーマにすることを決めました。そしてその中で、先輩からもらった『ソーシャルワーカーはいつも迷いながら関わるもので、その関わりがよかったかどうかなんてその人の人生が終わった時にしか分からない、お礼を言われたり達成感を得たりすることを求めてはいけない』という言葉を交えて、ひとつの事例を紹介することにしました。少しストイックすぎるのかもしれませんが、私が関わるクライアントさんはみな、本当に困難な状況を抱えながら懸命に生きておられる方ばかりですから、むしろすっきりと華麗に支援をしてしまえることのほうが怖いと思うのです。

患者さんが自分の生活を自分のものにしていく

 少し話が変わりますが、以前、同じ病院の看護部の役職者から「仕事をしていてどんな時が一番うれしい?」と聞かれたことがありました。私は「患者さんに“もうあなたがいなくても大丈夫”と言われているような気持ちになるときです」と答えました。具体的に言うと、始めは私が紹介してデイケアに通うようになったとしても、そのうちに患者さんが逆に私にデイケアのことを教えてくれるようになるなど、患者さんが自分の生活を自分のものにしていってくれていることを感じたときのことです。質問をした人は「看護師は自分が役に立ったときのことを挙げる人が多いのに、その逆なんだね。なんかいいね。」と言ってくれました。きっとそれは、クライアントの“人生”と向き合うというソーシャルワーカーの姿勢を学生の時から学んできたからだと思います。だからこの言葉は私にとって嬉しいものでしたし、これからもそんな気持ちで関わっていきたいなと思えました。

集い、学び、行動する意欲

 ケースレポートの最後にはソーシャルアクションについても触れました。私は元々人と関わることが好きで社会福祉学科への進学を選んだので、大学の時は制度や政策などの勉強はそこそこに、ボランティアなどに打ち込んでいました。しかしいざ現場に入ると、政策の変化で患者さんの生活が大きく変わることや、精神障害者が地域で暮らすにはハードルがたくさんあることを目の当たりにしました。多くの当事者や先輩方は、そんな現状を変えるために集い、学び、行動していました。それだけ精神障害者を取り巻く現状が悲惨だということが言えるわけです。そんな中、私もいずれはそういうことがきちんと出来る人になりたいと考えが変わり、仕事は続けながら大学院の総合政策科学研究科に入学し、昨年卒業しました。「社会的入院の解消」「地域移行」と言うけれど、そこには本当にたくさんの問題が立ちはだかっていて、一筋縄ではいきません。でも、これからも努力をしていきたいと思います。

つながりを大切に、末永くこの仕事を

 仕事をしながら、疲れたり嫌になってしまったりすることはもちろんあるけれど、やめたいと思ったことは一度もありません。そうやってたくさん悩みながら仕事をして、たくさんの人と出会えるソーシャルワーカーという職につけて、本当に良かったと思っています。これからも、自分の職場の中だけでなく、他機関の精神科ソーシャルワーカーのつながり、大学の同窓生とのつながりなどを大切に、末永くこの仕事をやっていきたいなと思います。

                      (精神保健福祉士・社会福祉士)

※2011年9月の定例会にて川上さん作成のケースを用いてケース討議を行いました。

2012年2月28日 更新 カテゴリー:私と仕事

2月特別講座のお知らせ 哲学の理論をヒントに考える

卒業生のみなさんへ

 寒い日が続きます。インフルエンザや流行性の胃腸炎が医療福祉施設でもはやっていると伺います。みなさまもどうぞお体ご自愛ください。
 さて、今年度の定例カンファレンスのまとめとして、外部講師をお招きしての特別講座を開催します。一人でも多くの近畿圏の卒業生にお集まりいただきたく、アクセスのよい会場を確保しました。新人の方々、大歓迎です。中堅、先輩と言われる方々も大歓迎です。大阪茶屋町の会場にてご来場を心よりお待ちしています。事前申し込みなくとも、当日参加大歓迎です。

  日にち:2012年2月25日(土)
  時間 :15時~17時(終了予定)
  受付 :14時30分より開場
  場所 :大阪梅田茶屋町 阪急アプローズタワー13階貸し会議室 8号室
  https://www.hhbm.hankyu-hanshin.co.jp/meeting/applause/access.html
  講師 :上野哲さん(小山工業高等専門学校専任講師 文学博士)
  タイトル
「ソーシャルワーカーとして不適切な判断を減らすための方法論~哲学の理論をヒントに二者択一の見方を乗り越える~」
  内容 :
 「正しいと思われる選択肢を選んだ瞬間に、その選択は間違ったものになる
可能性が生じる」と言われると、皆さんは一瞬、頭が混乱するかもしれません。簡単な例を用いて説明しましょう。例えば、明日あなたは遠方に出張する予定であるにもかかわらず悪天候になるという予報を聞き、予約していた飛行機のチケットをキャンセルして新幹線で目的地に向かうことにしたとします。しかし、翌日は快晴で、飛行機は平常通り運航した一方で、新幹線は人身事故の影響で8時間遅れて目的地に着きました。この場合、結果的に交通手段を飛行機から新幹線に変更した判断は間違いだったことになります。一方でもちろん、もし予報通り悪天候になって空港が閉鎖されていたら、新幹線を選んだ最初の判断は正しかったことになるでしょう。
 この事例から次のことが言えます。①「判断の正誤は結果が出るまでわからない場合がある」②「判断の正誤は偶然性に左右される場合がある」③「判断は他人が提供する情報や過去の自分の経験に基づいて、正しいものだと”信じて”行うしかない」。
 さて、ソーシャルワーカーである皆さんが日々直面する問題の多くは、実はこの3つの要素が複雑にからんでいます。こうした厄介な要素を含む問題に対して、皆さんは日々どのような心づもりで向き合っていらっしゃるのでしょうか。私は、哲学・倫理学が専門ですが、冒頭の「正しいと思われる選択肢を選んだ瞬間に、その選択肢は間違ったものになる可能性が生じる」という視点をヒントに、当日はソーシャルワー
カーとして結果的に不適切な判断をできるだけ減らすための方法を、みなさんといっしょに探っていきたいと思います。

  参加費:無料
  対象 :社会福祉現場で働く卒業生であればだれでも参加いただけます
  定員 :30名
  主催 :同志社大学 社会福祉教育研究支援センター・教育開発センター
  お問い合わせ:野村までynomura@mail.doshisha.ac.jp) 

 


 
講師紹介:上野哲先生(うえの てつ)
1972年生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。応用倫理学専攻。日本学術振興会特別研究員、広島大学教育学研究科勤務を経て、現在小山工業高等専門学校一般科講師(哲学・技術者倫理担当)。主著『応用倫理学事典』(共著)丸善、2008年、『教育と倫理』(共著)ナカニシヤ出版、2008年、『教育〈岩波応用倫理学講義6〉』(共著)岩波書店、2005年、「ケーススタディに基づく看護職倫理教育の課題と展望」『医学哲学医学倫理』第25号、2007年、「ハンセン病療養所の課題―新良田教室卒業生への聞き取り調査を手がかりに」『医学哲学医学倫理』第22号、2004年、「「ケア」をめぐる問題点」『日本の科学者』第38巻3号、2003年ほか。
 上野哲先生には、2010年度11月にも定例カンファレンス特別講座講師としてお越しいただきました。先生の気さくなお人柄と、「なるほどな」と誰もがうなる隠し玉を沢山用意してきてくださる研修が大好評を得ました。

           

2012年2月2日 更新 カテゴリー:今後の予定